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食物の脅威が発見の糸口に導く

ドン・バッテン著 Don Batten
によって翻訳されました クリエーション・リサーチ・ジャパン (sozoron.org)

1980 年代には、硝酸塩が胃癌の原因となるという考え方が信じられていた。環境保護論者は、硝酸塩や亜硝酸塩、ニトロソアミンの間の取るに足りない繋がりを作り出し、事もあろうに、ニトロソアミンは発癌性であると考えられた。その結果としてもたらされた公衆衛生上の脅威のため、多くの国の政府は、食品や飲料水に含まれるべき硝酸塩や亜硝酸塩の許容含有量の上限を大幅に引き下げた。亜硝酸塩は、あらゆる種類の食品、特に加工肉製品に使用されている主たる防腐剤であった。

硝酸塩や亜硝酸塩は本当に危険なのか?1980 年代半ばに行われた疫学的研究では、健康に対するリスクは何も見出されなかった1。野菜(食事で摂取される主たる硝酸塩源)を大量に食べ、あるいは高い硝酸塩を含む飲料を摂取している人で、胃腸癌になる確立が高いわけではない。実際、硝酸アンモニウム肥料を製造している工場の労働者において、癌に対する高い罹患率が認められるわけではなく、実際はその地域の他の工場での労働者よりも良好な健康状態を示した2

1980 年代に起きた大きな脅威の後に、より確かな方法で情報が積まれてきた。現在明らかになってきたことは、硝酸塩や亜硝酸塩は、健康な人たちにとって悪いというよりはむしろ、実際的には、疾患の原因となる微生物に対する防御系の一部として働いているということらしい。それは以下のようにして機能している3

食物(特に葉菜類)に含まれる硝酸塩は、咀嚼によって口腔内に放出される。硝酸塩はまた体内で合成され、血液中を循環する。もし、食物中への放出が十分でないなら、唾液から余分に分泌される。Staphylococcus sciuri S. intermedius などの嫌気性の微生物は、舌の奥にある深い窪みの中にいるのだが、硝

酸塩を亜硝酸塩に還元する。亜硝酸塩は飲み込まれ、胃に到達する。胃酸によって、亜硝酸塩は大量の一酸化窒素(NO)や他の窒素酸化物に変換される。NO への変換は非常に迅速なので、硝酸塩の摂取に続いて胃において生成する亜硝酸塩の上昇は計測できないほどである4。このことは、発ガン性のニトロソ化合物が、胃においては亜硝酸塩から形成されることはないことを意味する。

酸性条件下での亜硝酸塩やNO は、広範囲にわたる様々な微生物、例えば、混入することで生じる胃腸の疾患(食中毒)を引き起こすSalmonella(サルモネラ)やYersinia(エルシニア)のような病原菌に対して、強い抗菌作用を持つことが示されている。

食中毒に関する統計的な調査によると、例えば英国では、1987 年以来、すなわち食品や飲料に含まれる亜硝酸塩や硝酸塩の上限が本格的に引き下げられた頃から、食中毒の症例が顕著に増加した2。亜硝酸塩許容量の減少は、食中毒の原因となる微生物をコントロールするのが難しくなったことは疑う余地がなく、その結果食中毒の症例が増加したのである。1980 年代に起こった食物に関する脅威の結果、間接的にではあるが、ほとんど確実に深刻な食中毒死を引き起こしたのである。

NO はまた、血管拡張(血圧を下げる効果がある)や血液凝固に不可欠である血小板活性のコントロールにも重要な役割を持ち3、心臓病の物語の(良い方の)ファクターなのである。そればかりではなく、細胞内での情報伝達に関する様々な役割が、発見されつつある。

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生態系における窒素循環

硝酸塩や亜硝酸塩は、毒であるどころか、哺乳類の正常な生理機能の一部なのである。亜硝酸塩は、共生細菌によって生成され、気体状の窒素酸化物に変換され、胃において殺菌効果を発揮する。したがって、これは非生物の侵入を防御する非免疫系システムとして機能する。それは微生物と哺乳類の共生という高度に統合された(知的な)デザインであるように思われる。McKnight らは総説 3の中で、‘ 食事に含まれる硝酸塩は、疾患の治療に重要な役割を果たしている’ と述べている。

硝酸塩の生成に関係している、このような共生に重要な役割を果たしている最も重要なバクテリアは、Staphylococcus の仲間である。これはおそらく微生物における病原性の起源と関係しているだろう。人に関係する多くの病原体は、寄生性ではなく自由生活をしているか、あるいは腐生性(屍体などの有機物を摂取する)の種類であり、本来疾患の原因にはならない。下記がその例である。S. aureus はおそらく病院での主たる感染源だと思われるが、S. sciuri S. intermedius は、胃腸の感染症を撃退する!もう一つの例は、E. coli である。正常には、腸管に大量に住んでいる無害の細菌であり、E. coli の存在によって、有害な微生物が抑制されており、その上にビタミンの合成もしている。しかしながら、O157:H7 株は食中毒死の原因となる。他にも、無害な種類と病原性の種類に関するバクテリアの多様な例が存在する。病原性のものは、無害のものが対抗編成することで起こったという可能性は十分考えられる。

参考文献

  1. Gangolli, S.D., van den Brandt, P.A., Feron, V.J., et al., Nitrate, nitrite and N-nitroso compounds, Eur. J. Pharmacol. 292(1):1–38, 1994. テキストに戻ります
  2. Addiscott, T., Making a meal of it, New Scientist 165(2224):48–49, 2000. テキストに戻ります
  3. McKnight, G.M., Duncan, C.W., Leifert, C. and Golden, M.H., Dietary nitrate in man: friend or foe? Br. J. Nutr. 81(5):349–358, 1999. テキストに戻ります
  4. McKnight, G.M., Smith, L.M., Drummond, R.S., Duncan, C.W., Golden, M. and Benjamin, N., Chemical synthesis of nitric oxidein the stomach from dietary nitrate in humans, Gut 40(2):211–214, 1997. テキストに戻ります